This month's
story今月のお話

2019年4月の紹介

Inch by Inch

ひとあし ひとあし

One day a hungry robin saw an inchworm, green as an emerald, sitting on a twig.
あるひ はらぺこの こまどりが,こえだに いる エメラルドみたいに みどりいろの しゃくとりむしを みつけた。
He was about to gobble him up.
こまどりは かれに とびつこうと した。
“Don't eat me.
「たべないで くれよ。
I am an inchworm.
ぼくは しゃくとりむしだ。
I am useful.
べんりなんだよ。
I measure things.”
ぼく いろんなものの ながさを はかるんだ」
“Is that so!” said the robbin.
「ほんとかい!」 こまどりは いった。
“Then measure my tail!”
「じゃ わたしの しっぽを はかっとくれ!」
“That's easy,”
「わけないさ」
said the inchworm.
しゃくとりむしは いった。


 こまどりはしゃくとりむしにはかってもらって大喜び。しゃくとりむしは,おおはし,さぎ,きじ,はちどりを次々にはかった。あるあさ出会ったナイチンゲールは,「わたしのうたをはかってごらん」と。「でないとあさごはんにたべちゃうよ」と言われたしゃくとりむしは,ひとあしひとあしとはかって……。

 小さなしゃくとりむしが主人公の物語。主人公が自分より大きな動物をはかるためにひとあしひとあし進む様子や,自然の風景が色鮮やかにコラージュにて描かれています。子どもたちはしゃくとりむしに自分を投影し,ひとあしひとあしはかる主人公の冒険を楽しむことでしょう。

 しゃくとりむしはフラミンゴの首,おおはしのくちばし,さぎの足,きじの尾を測り,小さなはちどりは体全部を測ります。絵本にはこれらの動物の全体が描かれていませんが,しゃくとりむしはそれぞれの動物の特徴のある部分を測っていて,子どもたちはどんな動物なのかイメージすることでしょう。ラボ・ライブラリーでは谷川賢作(この作品を日本に訳した谷川俊太郎氏の子息)氏の音楽が流れますが,賢作氏はしゃくとりむしの二拍の動きを実際に見て,この音楽を作曲したとのことです。絵や音楽とともに,小さなしゃくとりむしが一生懸命にはかる様子を想像してください。

 作者のレオ・レオニは『フレデリック』『スイミー』『あおくんときいろちゃん』などでも有名なアメリカの絵本作家ですが,自身は「子どもの絵本作者」と断定されることを好まないと話しています。けれどもレオニ氏の描く小さなものへの愛情のあふれる作品に,子どもは勇気をもらい,励まされ,何度も何度も読みたくなるのではないでしょうか。