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Ali Baba and the Forty Thieves アリ・ババと40人の盗賊

2024年4月の紹介

Ali Baba and the Forty Thieves

アリ・ババと40人の盗賊

In a certain town in Persia there was once a poor woodcutter named Ali Baba.
ペルシアの国のある町に,アリ・ババという名前の貧乏なきこりが住んでいました。
Every day he would chop firewood in the hills,
山で木を切り,たきぎにし,
load it onto his donkey and bring it back into town to sell.
それをロバの背に乗せて帰り,町で売るという毎日でした。
One afternoon Ali Baba was hard at work felling a tree on a new hill,
ある午後のこと,アリ・ババは,ふだん行ったことのない丘で,いっしんに木を切りたおしていましたが,
when he heard a large number of horses approaching at full gallop.
とつぜん,何十頭もの馬が全速力で駆けるひづめの音がしたかと思うと,
They seemed to be coming straight towards him.
しだいにこちらへ近づいてきました。
Hurriedly he shinned up a tall tree to see what it was.
何事かと,アリ・ババは高い木によじ登って見わたしました。
Surrounded by a cloud of dust was a troop of sturdy men.
すると,砂ぼこりのなかに,たくましい男たちの姿が見えます。

 丘のふもとにやってきた山賊らしき男たちは,めいめい重たそうな袋をかついでいます。かしららしき男が「ひらけ,ごま」と叫びました。するとなんと,目の前の石の壁がふたつにわれて開いたのです。それを見ていたアリ・ババが,彼らが去った後に「ひらけ,ごま」というと岩は開き,なかには宝の山がありました。アリ・ババは宝のうちの少しを持ち帰りました。そのことを知った兄のカシムはすぐに洞穴に向かいましたが,中に入ったものの出られなくなり,やってきた山賊たちに殺されてしまいました。アリ・ババという男が宝を盗んだことを知った山賊は,アリ・ババを探しに町にやってきます。

 ペルシアは,現在の西アジアににあった国です。この物語は『千夜一夜物語(アラビアンナイト)』のなかのひとつです。『千夜一夜物語』は,女性を信じられなくなった王さまが毎晩ひとりずつ女性を殺していました。けれどもかいこしシェヘラザードという女性が毎晩王さまにおもしろい話しを語ったので,続きが聞きたい王さまはシェヘラザードを殺さず生かし続けたという物語です。その『千夜一夜物語』なかのでシェヘラザードが語った物語のひとつがこの『アリ・ババと40人の盗賊』です。ほかにも『シンドバッドの冒険』や『アラジンと魔法のランプ』といった物語が有名です。

 『アリ・ババと40人の盗賊』には,アリ・ババに仕えるモージアナという若い女性が登場します。モージアナは山賊が家にやってくると,機転をきかしてかめに隠れていた子分をやっつけ,最後には宴会の席で踊りながら盗賊のかしらを殺し,アリ・ババを助けました。西アジアの地域の物語には,生き生きと働き,知恵を働かせてものごとを解決する女性が登場し,そこに人気があるそうです。

 『千夜一夜物語』は,フランス人のアントワーヌ・ガラン(1646-1715)によって,原典のアラビア語からフランス語に訳して,1704年にヨーロッパに紹介されました。その際に加えられた作品がいくつかあり,この『アリ・ババ』もそのひとつといわれています。『千夜一夜物語』は,その優れた物語性だけでなく,ヨーロッパの東洋へのあこがれ(オリエンタリズム)ともあいまって,たいへん大きな反響があったといわれています。ヨーロッパの人びとが魅了されたエキゾチックな物語は,日本人にとってもふしぎに感じられ,おもしろいことでしょう。ぜひみなさんも,聞いてみてください。