This month's
story今月のお話

Riceball Roll おむすびころころ

2023年2月の紹介

Riceball Roll

おむすびころころ

Many years ago, there lived a poor, but kind-hearted old couple, Gramps and Granma.
昔,びんぼうだけれど,気のいいじさまとばさまがいたって。
One day, Gramps went into the mountains to cut wood, carrying some riceballs that Granma had made for him.
あるとき,じさまは,ばさまのつくったおむすびをもって,山へ木を切りにいったんだ。
At lunch time, Gramps opened up the package to eat his riceballs,
おひるになって,じさまはおむすびをたべようと,つつみを開いたんだけどね,
when suddenly, one rolled out!
そのとたんに,ころりん!
The riceball rolled, plumpity-plump, and fell into a mouse hole.
おむすびがひとつころがって,ころころすとんと,ネズミ穴に落ちてしまったんだ。
“Oh, that was a shame.”
「やれ,もったいないことをした」

 じさまが穴をのぞきこむと,ネズミのかわいい声がしたので,おもしろがっておむすびをつぎからつぎへところがしました。全部ころがしてしまうととネズミが穴からでてきて,お礼をしたいといいます。じさまがネズミのしっぽをつかんでついていくと,たどり着いたのはりっぱな座敷の上。ネズミたちはついていたお餅をご馳走してくれ,おみやげにとつづらをくれたのでした。家に帰ってじさまがつづらを開けてみると,なんと小判が詰まっていました。するとそれを聞きつけたとなりのじさまは,自分も小判がほしいと山に出かけ,ネズミ穴におむすびを押し込んだのでしたが……。

 有名な日本の昔話です。人のいいじさまと欲深いじさまが登場する典型的な昔話では,いいじさまは慎ましく,優しく,勇気があるなどの特徴があります。この物語では,人のいいじさまとネズミとのやりとりにたがいへの感謝や信頼が感じられます。また昔話は語りが心地よいものですが,この物語の英語も韻をふんだり擬態語があったりして,とてもリズミカルです。

 日本には『おむすびころころ』の他にも,「地蔵浄土」「団子浄土」といったよく似た昔話もあり,いずれも主人公が地下の国に行くお話です。日本では地底には浄土がある,ネズミは神の使者であると古くから信じられてきました。日本神話のオオクニヌシは,根の国に行ってスサノオに会い,ネズミに助けてもらい大きく成長します。またイギリスでは,有名なファンタジー作品の『Alice In Wonderland(ふしぎの国のアリス)』では,アリスがウサギを追いかけて穴のなかに入っていきます。物語のなかで人間が入っていってしまう地下には,「なにかあるだろう」というふしぎな魅力があるのでしょうか。