LABO
LIBRARYラボ・ライブラリー

専門家の声

音楽家

間宮 芳生

MAMIYA MICHIO

民族の根にふれて

私とラボ・ライブラリーの関わりは,もう40年ほど前からになるでしょうか。1972年の11月に刊行された『白雪姫』と『そらいろのたね』が最初の作品で,以来,いくつかのラボ・ライブラリーの音楽を手がけてまいりました。 そして,このラボ・ライブラリーの仕事は,音楽家としての私にとって,ひとつのとてもたいせつな仕事であると,位置づけることができます。 ラボ・ライブラリーが展開する物語世界は,ヨーロッパのもの,アメリカのもの,あるいは日本のもの,そして,私たちが,これからもっと深くつきあっていかねばならないアジアのものなど,たいへん多様です。 それらの国ぐにや地域の人びと,文化,その根っこの部分にあたる物語や音楽的要素を子どもたちに幼いときから体験してもらえればと思い,私はいつもこの仕事に取り組んできました。 そして,そうした「民族の音楽と物語との出会い」という体験のなかから,いろいろな民族,民族の文化がもっている感性の特質を感じとってもらえたら,それはたいへんすばらしいことではないでしょうか。 私は,ラボ・ライブラリーの音楽を考えるときはいつも,最後がどうなるかということをはじめに考えます。そのなかで,民話に題材をもとめた作品について申しますと,私は民話や昔話は不動のものではなく, 常に変わり得るもの,伝承されながら変化していくものだと思っています。ひとつのお話には,終わりがあるようでない。自分の感性のなかに物語を受け継いで, その続きをつくっていくというような気持ちがすべての民話のなかにあると思います。ですから,そのような想像力のつぎの発展をうながすような物語の終わり方というものを,音楽においても表現できればという思いで, 私はラボ・ライブラリーの音楽に取りくんでいるのです。