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story今月のお話

A Tale of Six Talented Men きてれつ六勇士

2024年5月の紹介

A Tale of Six Talented Men

きてれつ六勇士

In a long-ago kingdom there was a war,
ずうっと昔,ある王国が戦争をおっぱじめた。
a war in which many flags were waved,
さかんに旗がうち振られ,
and many bugles blown,
やたらにラッパが鳴りひびき,
and many people fought and died.
ひとびとは戦っては,ばたばた死んでいった。
During the war, the king made all kinds of promises to his soldiers.
そのあいだじゅう,王さまは兵隊たちにむかって,何でもかんでも約束した。
But what happened when the war was over?
で,戦争が終わったときにどうなったかって。
Well, that's a different story….
まあね,話はがらりとちがってたというわけだ。

SOLDIER:  What do you think of that?
兵隊: いったいぜんたい,どうしてくれるんだい。
What do I have to show for four years of fighting and marching and camping out in the rain?
やれ戦闘,やれ行軍,やれ雨のなかの野営てなぐあいに4年間もがまんしたあげくにさ。ほうびときたら,
A sword scar across my ribs,
あばらに刀きず,
flat feet,
生まれもつかぬへんぺい足,
rheumatism in my back,
背中にゃリューマチ,
and three farthings in my pocket!
ポケットにゃ,びた銭がたったの3枚とくらあ。
“On your way,” says he, “we have no need of you now.”
「解散だ。おまえたちにはもう用はない」なんてぬかしおった。
Huh!
へっ。
But he'll be sorry!
いまに見ていろ。
Just as soon as I find the right man to help me, he'll be sorry!
おれさまがいい相棒を見つけたら,さっそくほえ面かかせてやるからな。

 兵隊は森にやってくると,かんたんに大木をひっこぬく「力持ち」,2マイルさきのハエの左眼をぶちぬくことのできる「猟師」,2マイルむこうの風車を鼻息で回せる「鼻息男」,足が速いので休むときには1本の足をはずす「イダ天野郎」,まっすぐに帽子をかぶるとそこらじゅうが凍ってしまう「帽子男」に出会い,仲間となります。その6人が都にやってくると,王さまのおふれが読まれていました。王さまの姫君と競争して勝った者をおむこさんにむかえるとのこと。そこで兵隊はさっそくこの競争に申し込み,イダ天野郎を走者としてエントリーします。

 奇妙きてれつな力をもった6人の男が,力を合わせて王さまをやっつけるこの物語は,グリム童話のひとつです。「グリム童話集」は,グリム兄弟がドイツの各地の人々から聞いて,200話近くを集めた昔話集です。版を重ねながら少しずつ書きかえられ,ドイツでは聖書のつぎによく読まれるほど人気があるそうです。

 競争はイダ天野郎が圧勝しますが王さまは約束を守る気などさらさらなく,六勇士たちを巨大かまどで焼き殺そうとしたり,軍隊を差し向けたりします。そんなピンチを,それぞれの特殊能力を生かして奇想天外な方法で逃れ,最後には国じゅうの金を残らず持って意気揚々と去っていく。『きてれつ六勇士』はそんな,胸がすく痛快な冒険物語です。

 私たちは物語を耳にして想像の世界に入り,登場人物に同化して冒険をともにします。波乱万丈の冒険を物語のなかで経験することで,生きることに喜びや勇気をもつことができます。六勇士がそれぞれの特技を生かして活躍する物語は,自己肯定感をもつことが必要とされる現代の子どもにとって,特に意味があるのではないでしょうか。赤瀬川原平氏のイラストが楽しい絵本を手に,ぜひお聞きください。