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story今月のお話

The Bremen Town-Musician ブレーメンの音楽隊

2024年2月の紹介

The Bremen Town-Musician

ブレーメンの音楽隊

Once upon a time, a man had a donkey.
むかしむかし,ある男が1ぴきのロバを飼っていました。
The donkey carried sacks of wheat to the mill.
ロバは粉ひき場に小麦の袋を運んでいました。
Back and forth, many times a day.
えんやきた,こらさ,1日に何度も何度もです。
But he was getting old and slow.
ところが,ロバは年をとり,のろまになって,
The sacks felt heavy: ba-a-a-ck and fo-o-o-orth.
小麦袋が重たくなり,えーんやきた,こーらさあ。
The man got angry with the donkey and grumbled:
おとこはこのロバに腹を立てて,ぶつぶついいました。
"That donkey's getting old and no use.
「あのやろう,おいぼれちまって役に立たん。
I'll have no sell him to the butcher."
肉屋に売りとばさにゃあならん」
When he heard this, the donkey thought:
これを聞いて,ロバは考えました。
"I'll have to run away.
「逃げだそう。
I'll go to Bremen.
ブレーメンに行って,
I'll be a town-musician."
町の音楽師になるんだ」

 ロバはギターを背中にしょって,町の音楽師になろうとブレーメンに行くことにしました。その途中,同じようにお払い箱になったイヌ,ネコ,オンドリと出会い,いっしょにブレーメンに向かうことになります。4ひきがしばらく行くと,森の中に一軒の家がありました。その家のなかをのぞくと,どろぼうたちとごちそうの山。4ひきの動物たちは,どうしたらあのごちそうにありつけるかを考えて,みごとどろぼうたちを追いだすのでした。

 有名なグリム童話のひとつです。役に立たなくなり居場所を失ったもの同士が,都会のブレーメンに行って音楽師をめざそうとする物語。この物語に出てくる「ブレーメン」という町はドイツ北部に実在しており,運河が流れているため昔から貿易の重要な港でした。田舎者の動物たちは,都会のブレーメンに行って一旗揚げようと思ったのでしょう。でも結局のところ,彼らはブレーメンには行かずに,途中にあった森の一軒家で静かに暮らすことになります。ブレーメンの町の中心にあるマルクト広場には,ここまでたどり着かなかった4ひきの像がたっています。

 絵本には井上洋介氏が,土の香りのするようなドイツの田舎の風景を画面いっぱいに描いています。日本語の朗読は,語りに定評のある俳優の久米明氏。ゆったりと語る久米氏の語りに,私たちはドイツの昔話にひきこまれます。まるで,動物たちと一緒に,歌を歌いながらドイツの道を行くかのように。みなさんも,どうぞいっしょに歌いながら,4ひきの旅に同行してください。