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THE REVENGE OF ISHTAR ギルガメシュ王のたたかい

2023年9月の紹介

THE REVENGE OF ISHTAR

ギルガメシュ王のたたかい

The city of Uruk had become the happiest place in the ancient world.
今では,ウルクは,とてもやすらかな都になっていました。
Gilgamesh, once the cruelest and loneliest of kings, had changed.
ギルガメシュ王は,長いあいだ友だちがなく,そのために,たいそうざんこくで,人びとをくるしめましたが,
He had learned through friendship with Enkidu, the wild man from the forest, how to be human and care for others.
エンキドゥという友だちができてから,おもいやりのある,やさしい王になりました。
With Enkidu to help him, Gilgamesh worked to make Uruk a good city for all who lived there. By day they sailed on the Euphrates River and made plans. They directed the building of fine houses and magnificent temples.
ギルガメシュ王とエンキドゥは,ユーフラテス川をのぼりくだりしては,都をながめ,計画をねり,すばらしい家々や立派な寺院をたてさせて,人びとのために,いっしょうけんめいはたらいていました。
On quiet evenings, they played the game of twenty squares
一日のしごとをおえると,ギルガメシュとエンキドゥはくつろいで,ゲーム盤であそび,
while the beautiful Shamhat sang and watched.
それを,シャマトは,そばで,歌をうたいながら,見ていました。
Everyone loved Shamhat.
人びとはみんな,シャマトがだいすきでした。
She had brought Enkidu to Uruk and peace to the city.
シャマトが,エンキドゥを森からつれてきてくれたので,ウルクが,こんなにやすらかな都になったのでしたから。
People passing outside the palace stopped to listen to her voice and were grateful.
シャマトの声がきこえると,人びとは立ちどまって耳をすまし,シャマトへの感謝の気持ちでいっぱいになるのでした。

 しかしある日,怪物フンババが起こした災いがウルクの都を襲い,シャマトは命を落としてしまいます。そこでギルガメシュとエンキドゥは苦難を乗り越え,お互いに励まし合いながら怪物フンババを倒しに向かいます。奮闘の末にフンババを倒したギルガメシュにイシュタールは,自分と結婚するように迫りますが,ギルガメシュは拒否します。怒ったイシュタールは,空の怪獣である天の牛を引き連れてウルクの町に襲いかかりましたが,これもギルガメシュとエンキドゥは力を合わせて撃退します。どうしてもギルガメシュを傷つけられないイシュタールは,やり方を変え,エンキドゥをひどい病にかけて死に追いやってしまいます。都じゅうの人びとも嘆き悲しみ,ギルガメシュはエンキドゥの墓をつくりました。その墓にイシュタールがやってきて,エンキドゥのたましいをよみの国へと連れていくのでした。

 大切な人を失ったギルガメシュは,「死こそ,この世で,もっとも悪いかいぶつだ」と思い,死を滅ぼし永遠の命の秘密を求めて,長く苦しい旅にでます。当初,ギルガメシュは死をも恐れない暴君でした。それがエンキドゥという最愛の友人を得て,ともに協力して都とそこに住む人々を助けるという真の英雄になったのです。しかしながらギルガメシュは盟友であるエンキドゥを失います。ギルガメシュは死について考え,永遠の生命を追い求めて旅に出るのでした。

 この絵本作品のもとになったのは「ギルガメシュ叙事詩」です。5000年も昔の古代の言葉で書かれたこの物語は,多くの学者の手によって研究され,翻訳され,私たちの手元まで届けられました。時を経たいまを生きる私たちにとっても,魅力的な作品です。ギルガメシュという英雄の波乱万丈の物語に,生と死,友情,人間と自然,人間の心の成長といった,時代や場所を越えて,人間の魂をふるわすものを感じられるからではないでしょうか。みなさんは,この物語になにを感じとりますか。