This month's
story今月のお話

Little House on the Prairie 大草原の小さな家

2023年7月の紹介

Little House on the Prairie

大草原の小さな家

I am Laura Ingalls.
わたしはローラ・インガルスです。
This story happened in1872 when I was five years old.
これはわたしが5歳,1872年のころのお話です。
The log cabin I was born in was built by Pa
わたしが生まれた丸太小屋はとうさんが建てたもので,
and it stood in the middle of the wildness, in the Big Woods in the state of Wisconsin in North America.
大自然のただなか,北アメリカ・ウィスコンシン州の大きな森のなかにありました。
You had to go for miles and miles from there in and out among the huge trees
そこから何マイルも何マイルも,大木のあいだをいくと,
to at last find the three or four log cabins scattered about at the edge of the woods.
森のはずれにきて,やっと三,四軒の丸太小屋が,ぽつんぽつんとある,というふうでした。
All you could see was the wild animals who lived in the forest.
見かけるものといったら,森にすむ野生の動物だけでした。
My family were Pa, Ma, my big sister Mary, baby Carrie and me.
家族はとうさんとかあさんと,姉さんのメアリイ,赤ちゃんのキャリー。
We spent our days here clearing the woods for a farm.
一家はここで,森をきりひらく開拓の日々を送っていたのです。

 150年近く前のアメリカ中西部に実際に存在した,インガルス一家の物語。多くの危険と隣り合わせの大草原での生活。父さんが何日もかけて町に出かけているあいだ,インガルス家の家畜小屋にクマが現れ,残った家族は怖い思いをしました。それでもクリスマスには,サンタクロースがやって来るのを楽しみに待つ姉妹。水かさの増した川を歩いて渡り,お隣さんの(といっても川を渡ったはるか先ですが)エドワーズさんがプレゼントを届けにやって来てくれたことも。大草原に火事が起きたときには,それまで父さんと母さんが手作りで作ってきた丸太小屋の家や家畜小屋が炎にまかれ,家族の安全も心配されました。大草原で暮らすなか,姉のメアリィの目が見えなくなったり,末妹のグレイスが生まれたりと家族にも変化がありましたが,ローラは家族の生活の担い手として成長していくのでした。

 アメリカの作家,ローラ・インガルス・ワイルダー(1867-1957)の自伝的な物語です。物語は主人公ローラが5歳の頃からはじまり,ウィスコンシン州の森のそば,カンザス州の大草原,そしていくつかの土地を経てサウスダコタ州へと移り住みます。この開拓の時代,アメリカでは 人びとは自分の住む土地を求めて,そして自分の可能性を試すために,西へ西へと向かいました。ローラも家族でアメリカの真ん中の大草原を幌馬車で移動し,自分たちで家を建てて住み,しばらくするとまた移動するといった生活をローラが20歳になる頃までしていました。

 自然を人間の意のままに変えようとするのではなく,自然に人間が寄りそって生きていた時代。人が多く住んでいない中西部では,家族で力をあわせて暮らしており,その温かみを感じることができます。自然の中で家族だけで暮らす生活は,自分の力で切り拓いていかなければなりません。明日を信じて生きていく自身に満ちた父さん,それを支えながらともに生きる家族。

 ローラは60歳を過ぎてから「父さんが話してくれたさまざまなおはなし。母さんが父さんを愛していたこと。それらを書いて残したい」と物語を書きはじめ,9作品(番外編を含むと11作品)もの「小さな家シリーズ」を書きました。目が不自由だった姉メアリーのために,ローラはさまざまな状況を説明していたといいます。その説明で豊かな言語表現が養われたのでしょうか。それともよき時代のよき家族の物語に人々は魅了されるのでしょうか。「小さな家シリーズ」は,ローラの時代のような生活がなくなり,道具や生活環境が大きくかわったいまでも,多くの人びとに愛され続けています。