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story今月のお話

The Tale of Benjamin Bunny ベンジャミン バニーのおはなし

2023年5月の紹介

The Tale of Benjamin Bunny

ベンジャミン バニーのおはなし

One morning a little rabbit sat on a bank.
あるあさ,小さなうさぎが みちばたのどてのうえに すわっていました。
He pricked his ears and listened to the trit-trot, trit-trot of a pony.
うさぎは みみをぴんとたてて,ぱかぱか ぱかぱかという うまのあしおとを きいていました。
A gig was coming along the road; it was driven by Mr. McGregor, and beside him sat Mrs. McGregor in her best bonnet.
ばしゃが やってきたのです。ばしゃを ぎょしていたのは,マグレガーさんで,そのわきには,マグレガーさんのおくさんが よそゆきのぼんねっとを かぶって すわっていました。
As soon as they had passed, little Benjamin Bunny slid down into the road, and set off––
ばしゃが いってしまうがはやいか,ベンジャミン・バニーは,どてから みちへすべりおりて――
with a hop, skip and a jump––
ほっぷ・すきっぷ・あんど・じゃんぷをしながら,
to call upon his relations, who lived in the wood at the back of Mr. McGregor's garden.
しんるいのいえにかけつけました。このしんるいのうさぎたちは,マグレガーさんのはたけのうしろの森にすんでいたのです。

 小うさぎのべンジャミン・バニーは,ある日,いとこのピーターのところへ遊びにいきました。行ってはいけないといわれていたマグレガーさんの畑に新しい青い服をおいてきてしまったピーターは,元気がありません。そこでふたりは服を取りもどしにいくことにします。畑にいくとかかしがピーターの服を着ていました。マグレガーさんが留守だったので,ぶじに服を取りもどすことができ,ふたりは腕にいっぱいの玉ねぎを持って帰ろうとします。でもその途中,ねこをみかけ,ふたりはかごの下に隠れます。するとねこがかごの上に座って夕方になるまで居座ってしまい,ピーターとベンジャミンは逃げだすことができなくなってしまいました。

 この物語は1904年に発刊された『ピーター・ラビット』の続編で,ピーターといとこであるベンジャミンの物語です。ベンジャミンはピーターの行動を止めたり,サポートしてあげたりと頼もしい友人のような存在です。ポターはうさぎを描くのが好きで,スケッチブックいっぱいにうさぎを描いていました。実際にポターは,ピーターとベンジャミンという名前のうさぎを飼って,可愛がっていたそうです。

 父親亡きあと,ピーターのお母さんはひとりで子どもを育ててきました。絵本を見ると,お母さんの営むお店が描かれています。「お茶とたばこ」という看板が見え,店の奥には乾燥させたラベンダーが壁にかかっており,テーブルの上にも商品があって,どのように生計をたてていたのかが,そのイラストからわかります。

 お母さんは,冒険して帰ってきたピーターを叱らず,行ってはいけないマグレガーさんの庭に行ったことも許してくれました。私たちの生活にもあるような親子のエピソードです。動物を擬人化し登場人物として,実世界にもあるようなエピソードを描いた物語に,子どもは自分の生活を重ね合わせ,ベンジャミンやピーターといっしょに物語の世界へ出かけるのでしょう。