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story今月のお話

Spring Breezes Huff and Puff! はるかぜ とぷう

2023年4月の紹介

Spring Breezes Huff and Puff!

はるかぜ とぷう

Shhhhh! Don't wake them up yet!
しーっ,静かに。まだ起こさないんだよ。
Who?
だれのこと?
Why, the little spring breezes.
だれって,春風たちさ。
They're all sleeping in the Old Oak Tree Hotel.
みんな大きなかしの木ホテルで眠っています。
The tree has no leaves yet.
木には葉っぱもついてない。
The field has no flowers yet.
野原には花も咲いてない。
But, you see, spring is coming.
でも春はほら,もうすぐそこです。
Topu is a little spring breeze.
とぷうは小さな春風の子です。
He came a long way with his mother and father.
お父さん,お母さんといっしょに長い旅をしてきました。
He's all tired out and sleeping, too.
すっかり疲れて,眠っています。

 春風の子とぷうは起きると,仲間といっしょに原っぱや町,運動場へと飛んで出かけていきます。人々は気持ちよさそうに「やあ,春風だ!」「いい気持ちだなあ」と喜んでくれるのでした。そしてとぷうを大将とする春風のモモイロビンターズたちは、お出かけする子どもたちについて動物園にやってきました。動物たちも春風の訪問に気持ちよさそうです。そこでとぷうは,ライオンのたてがみで遊んでいるキイロホッペターズに「いっしょに遊ぼうよ」と申し込みますが,相手の大将は「いやなこった!」とお断り。そこでケンカが始まると,動物園には突風が吹き,砂ぼこりはたつわ,さんざんな様子に。その騒ぎを治めたのは,ライオンのひと吠えでした。

 作者の小野かおる氏は,ライオンの「QUIET!!(うるさいぞ!)」を書きたくてこの本を作ったといいます。その場面ではライオンの顔が大きく描かれ,迫力満点です。のどかな春風の訪れから物語は始まり,ページがめくられるたびに,子どもは「くるぞ,くるぞ……」とワクワク,ドキドキしながら,このライオンの大きな顔が現れるのを楽しみにします。たとえ結末を知っていても,何度もくり返し読みたくなるので,子どもには人気の作品です。

 絵本の各ページの野原や町,動物園は細かく描かれており,ことばで表現されない部分にもストーリーが感じられます。作者の小野かおる氏は,「ことばで説明できるところは絵にしない」と話されました。小野氏は絵の動きで物語を語ります。この絵本を見ると「絵が物語る絵本」ということがよくわかります。

 春の訪れはうれしいものです。日本では一般的に4月が年度始まりとなり,春は新しいことがはじまる季節でもあります。屋外に出てみたら,そろそろ春風のやってくるのを感じられるでしょう。でも春風のケンカには巻き込まれないように,くれぐれも気をつけてくださいね。