This month's
story今月のお話

Bravo, Kittens! てじなしとこねこ

2022年12月の紹介

Bravo, Kittens!

てじなしとこねこ

See the road through the forests and fields.
森と畑をぬって道がある。
Winding and bouncing, it goes to a village.
曲がりくねって向こうの村まで続いている。
A poor old man is walking along with a big black suitcase in his hand.
おじいさんがひとりとぼとぼ,大きな黒いかばんを下げて歩いている。
Yellow fields have plenty of hay.
畑は干し草でいっぱい。
A happy cow gives a long moo.
モー,牛がのんびり鳴いている。
Outside the village, the old man stops.
村の入口で,おじいさんは立ちどまった。
He sets up a table and begins to talk.
おじいさんはテーブルを出して,何やらしゃべり始めた。
“Ladies and gentlemen,
「さて,お集まりのみなさまがた,
see what I have!
これにとりいだしましたるは,
An empty box, empty as the sky….”
箱はからっぽ,すっからかん,たねもしかけもございません…」。

 このおじいさんが始めた手品の練習をじっとみていた4ひきのこねこ。その晩,おじいさんの部屋に忍びこんで,手品の箱にもぐりこんでしまいました。次の日におじいさんが手品をすると,箱からこねこがつぎつぎに飛び出してきて,手品は大失敗してしまいます。さらに次の日の手品では,今度は帽子の中からこねこが出てきてしまい……。でもお客たちは大笑い。その様子を町の劇場の人が見ていました。

 ひとりの手品師のおじいさんが,こねこのいたずらに腹を立てていたものの,それが観客に受け,さらには町の大きな劇場に出演できるようになり,幸せになるというストーリー。手品のいたずらをするこねこの登場を今か今かと,ドキドキしながら読みすすめることでしょう。最後にはおじいさんとのこねこにハッピーエンドがおとずれるという,心温まる物語です。

 この絵本の作者クロード・岡本氏は,発刊当時17歳でした。日本人の父親とフランス人の母親のもとにパリで生まれ,生活していました。幼い頃から油絵,パステル画,水墨画などを描き,「天才少年画家」と評されていたそうです。この絵本ののどかな田舎町,そして劇場はフランスのそれらがモデルになっていたのでしょうか。もう一度絵本を手に,聞いてみたくなりますね。