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story今月のお話

The Emperor's New Clothes はだかの王様

2022年10月の紹介

The Emperor's New Clothes

はだかの王様

Hans : Your majesty.
陛下。
Emperor :  Don't bother me!
ええい,じゃまするな!
Get out of here quick!
さっさと出ていかんか!
I want only tailors in my wardrobe!!
衣装べやには,仕立屋だけじゃぞ!!
Hans : Two more weavers to see you, your Majesty.
織物師がふたり,お目通り願っておりますが,陛下。
Emperor :  Oh? That's different.
うん? そりゃ別じゃ。
Bring them in!
通せ!
Hans : The weavers, Schickel and Gruber, your Majesty.
織物師,シッケルとグルーバーでございます,陛下。
Emperor :  Welcome, welcome!
よく来た,よく来た!
What have you brought to delight my eyes?
何か余の目にかなうものがあるかな?

 王様のもとにやってきた織物師を名乗るふたりの男は,「魔法の布」を織れるといいます。その「魔法の布」はまぬけで役目にふさわしくない者には見えないというのです。そこで王様はふたりにその布を作るように命令し,時間も絹もお金も存分に与えました。けれどいつまでたっても布が完成しないので,王様は布を見てくるようにかしこくて利口なはずの総理大臣や軍総司令官をつかわします。ところが織物師のふたりに「ごらんください」といわれても,そこには何も見えません。布が見えなくて自分が愚かだと認めたくないばかりに,総理大臣や軍総司令官は「陛下にどんなにすばらしいかお伝えするぞ」というのでした。やがて「魔法の布」ができあがり,王様が見にいきますが,やはり王様にも見えません。それでも布が見えないと言うことのできない王様は「いかにも見事、余は満足じゃ」といい,翌日のおでましにその布で作った服を着ることになるのでした。

 家来を引き連れ,王様は魔法の布でできた服を着て歩きます。王様も周りの大人も、まるで服が見えるようにふるまいます。ところがひとりの子どもの発した「どうして王様はなんにも着ていないの?」ということばに,まわりの大人も王様は裸で歩いているという本当のことを口にするようになります。これは世界的に有名な童話で,「はだかの王様」といえば,本来の自分の姿を理解していない権力者を揶揄して呼ぶことばとしても使用されるほどです。地位が高いためにまわりの批判や反対を受け入れず,現実をありのままにがみえなくなっている人を指します。

 デンマークの有名な作家,アンデルセンが書いた物語です。アンデルセンは貧しい靴屋の子として生まれましたが,童話だけでなく小説や戯曲なども書いて有名な作家となりました。『はだかの王様』は,スペインのファン・マヌエルによる『ルカノール伯爵』という14世紀の寓話集からヒントを得て書かれた作品だそうです。若きルカノール伯爵の養育係が,さまざまなはなしを交えて道徳的なものごとを伯爵に伝える51話からなる物語で、その第32話ある「ある王様といかさま機織り師たちに起ったこと」がその原型です。アンデルセンはそのような物語を,彼の美しい語り口で童話『はだかの王様』にしたのでした。