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The Tale of the 15 Castaway Boys 十五少年漂流記

2022年7月の紹介

The Tale of the 15 Castaway Boys

十五少年漂流記

My name is Baxter.
ぼくはバクスター。
I'm English, but I was born in New Zealand.
ニュージーランド生まれのイギリス人です。
My diary, which I am about to recount,
これから紹介するぼくの日記は,
is a record of adventures, which ordinary boys would never be able to experience.
ふつうの少年では,けっして体験できない冒険の記録です。
February 15, 1860.
1860年2月15日。
I was 13 years old,
ぼくは13歳で
a 5th former at the Chairman School in Auckland.
オークランドにあるチェアマン寄宿学校の5年生だった。
An exciting summer vacation was to begin that day.
それは,心おどる夏休みが始まる日のこと。
A group of 14 boys from the school were to embark on a 6-week cruise.
ぼくたち学校の仲間は,14人で6週間の船旅に出かけることになっていた。
The vessel was a double-masted schooner named the Sloughie.
船は,スラウギ号という2本マストのスクーナーだ。

 寄宿学校の14人の生徒と見習い水夫のモコ,少年ばかり8~14歳の15人。彼らの船は出航予定だった前夜に沖に流されてしまい,無人島にたどり着きます。船から下りて洞窟に移った彼らは島をチェアマン島と名づけ,リーダーとなる大統領を選挙で決めるなどして生活を整えていきます。やがて年長のふたりであるフランス人のブリアンとイギリス人のドニファンが対立するようになり,仲間の結束が乱れていきます。島での生活が2年を過ぎた嵐の夜に,謎の船が島にやってきて,少年たちの運命は激変するのでした。

 この作品は,勤勉で器用な13歳のバクスターの独白で物語が進んでいきます。年齢や出身国や民族の異なる15人の少年の,勇気と知恵と科学的な知識をふり絞っての島での生活に,ドキドキしながら引き込まれます。その生活には恐怖や絶望,葛藤などもありますが,読者は彼らの行動に「協調していくことの尊さ」を感じることでしょう。

 この物語は,フランスの作家ジューヌ・ヴェルヌ(1828-1905)の『二年間の休暇』(フランス語の原題)に題材を求めています。ヴェルヌは豊かな科学知識と想像力に支えられた作品を多く書いています。そのなかには,潜水艦やロケットなど,現代では実用化されていますが,ヴェルヌが書いた当時にはなかった乗り物などが登場していました。

 ヴェルヌがこの作品を書いた頃の,1850年代のヨーロッパは,科学技術が発達し人間の暮らしは豊かになっていきました。しかしその一方で,大国どうしがせめぎあい,暗雲がたちこめていました。そのような時代に,国籍や民族の違う人々が互いの違いを越えて手をたずさえて協同する物語を,ヴェルヌは書きました。私たちがいきている,いままさにこの時代に,ぜひ読みたい物語のひとつです。