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story今月のお話

2020年11月の紹介

STONE SOUP

石からスープができるかな

Three soldiers trudged down a road in a strange country.
3人のへいたいが,しらない土地をとぼとぼ歩いていました。
They were on their way home from the wars.
戦争からのかえりみちでした。
Besides being tired, they were hungry.
3人は,つかれているうえにおなかもぺこぺこでした。
In fact, they had eaten nothing for two days.
なにせ,まる2日というもの,なにも食べていなかったのです。
"How I would like a good dinner tonight," said the first.
「ああ,今夜,うまい晩めしにありつければなぁ」と,1ばんめのへいたいがいいました。
"And a bed to sleep in," said the second.
「そして,ベッドでぐっすりねむりたいもんだ」と,2ばんめのへいたいがいいました。
"But all that is impossible," said the third.
「それはむりな話というものさ」と,3ばんめのへいたいがいいました。
"We must march on."
「さぁ,歩いた歩いた」
On they marched.
3人は歩きつづけました。
Suddenly, ahead of them they saw the lights of a village.
すると,とつぜん,ゆく手に村のあかりがみえました。
"Maybe we'll find a bite to eat there," said the first.
「やれやれ,これで晩めしにありつけるかな」と,1ばんめのへいたいがいいました。
"And a loft to sleep in," said the second.
「ひと晩,やねうらにとめてもらえるかもしれん」と,2ばんめのへいたいがいいました。
"No harm in asking," said the third.
「とにかく,たのんでみようじゃないか」と,3ばんめのへいたいがいいました。


 けれども村人たちはこわがって,3人のへいたいのことを受け入れてはくれませんでした。そこで3人は「石でスープをこしらえよう」といいだし,村人たちは「なんだって?」と興味津々です。へいたいはまず,村人から借りた大きな鍋に石を入れ,水を入れて火にかけました。そして,もう少し材料が入ればこの石のスープはもっともっとおいしくなるのになあ,とつぶやくと,興味をもった村人はそれぞれ少しずつ食材をもってきます。にんじん,じゃがいも,キャベツ,牛肉,大麦,牛乳,しおとこしょう。これらを入れて3人はおいしいスープをつくることに成功し,村人みんなで味わうことができました。楽しい気持ちになった村人は,3人を村のりっぱな家で泊め,翌日はみんなで3人の旅立ちを見送るのでした。

 3人のへいたいは知恵を働かせて,ピンチを乗り切ることができました。村の人びとは,おいしいスープを食べることができ,お祭りのように陽気に歌い踊っています。3人のおかげでみんなが幸せな気持ちになったのです。このユーモアあふれるフランスの昔話を,アメリカの絵本作家マーシャ・ブラウン氏が描きました。世界各地の物語を,作品ごとにあった技法で描く氏が,オレンジと茶色を基調にし,登場人物たちの表情や風景をていねいに描いています。

 3人の兵隊がとんちを聞かせて食事とベッドにありつく,といった昔話はヨーロッパのあちらこちらにあり,この絵本はフランスの民話をもとにしています。そして絵本の扉絵には,ケルト音楽の楽器「バグ・パイプ」が描かれていることから,舞台はフランスのブルターニュ地方だということがわかります。バグ・パイプといえばスコットランドが有名ですが,ブルターニュ地方にもスコットランドと同じくケルト文化が残されいて,お祭りのダンスでよくバグ・パイプは吹かれるそうです。この作品のなかにもバグパイプを吹いている村人がいますから,探してみてください。