This month's
story今月のお話

2020年1月の紹介

The Snow Daughter

ゆきむすめ

In a far-away land, there lived a good old man and a good old woman.
遠い,遠いあるところに,おじいさんとおばあさんが住んでいました。
For a long , long time, they had waited for a child.
ずっと長い間,ふたりは子供がほしい,ほしいと思ってきましたが,
They had no children, so they were sad and lonely.
子供をさずかることができませんでしたので,ふたりはそれをたいそうさびしく思っていました。
One winter, the children were happily playing in the snow.
ある冬のことです。雪のなかで子供たちがたのしそうにあそんでいました。
They were running, sledding, throwing snowballs, and making a big snowman.
かけまわったり,そりですべったり,雪合戦をしたり,大きな雪だるまを作ったりしていました。
The old man and his wife watched the happy children.
おじいさんとおばあさんは楽しそうな子供たちをじっと見ていました。
“If we only had a daughter,” the old wife said.
「娘がありさえしたらねえ」おばあさんがいいました。
“Say, Goodwife, let's go outside.”
「なあ,ばあさんや,わしらも外へでてみようじゃないか。」
The wife understood immediately.
おばあさんはすぐにわかりました。
“Oh, yes! Let's make a little girl, Husband. A snow daughter!”
「いいですとも,かわいい女の子を作りましょ,おじいさん。雪娘ですわね。」


 するとふたりがつくった雪娘は突然笑いだし,うごきだしたのです。おじいさんとおばあさんは目に入れてもいたくないほど雪娘をかわいがりました。けれども冬がすぎ春になると,雪娘は家にとじこもって外に出ようとはしません。夏のある日,4人の女の子が遊びにさそいにくると,おじいさんおばあさんの勧めもあって雪娘は出かけていきました。日が落ちると女の子たちはたき火の飛び越えごっこをはじめました。最初は断っていた雪娘でしたが,「こわいのね」とはやし立てられ飛ぶことに。けれども火を飛び越えた雪娘が,下に降りてくることはありませんでした。

 ロシアの昔話の多くは再話作品ですが,この『ゆきむすめ』は再話者が不明だということです。雪の多い地域の人々にとって長い冬,そして待ち遠しい春ですが,春になれば雪や氷が溶ける不思議をあらわす雪の妖精を,人々は語り継いできたのでしょうか。

 この絵本を編集をした松居直氏(元福音館書店/児童文学者)はその著書のなかで,「(昔話絵本のイラストは)全体のふんいきにしろ、その民族のもっているものを正確にださなければいけない」としています。この絵本の作成にあたっては,人物を描くことができる画家として,彫刻家の佐藤忠良氏に依頼したとのことです。佐藤氏が戦後のロシアで見聞きした現地の人々の様子がこの作品に生かされました。人物以外にも風景が描かれない白い冬と,色鮮やかな風景の春夏を描いて対照的に表現しています。