This month's
story今月のお話

2019年12月の紹介

THE LION, THE WITCH AND THE WARDROBE

ライオンと魔女と大きなたんす

EDMUND : Of course it would be raining!
エドマンド:あーあ,外はザンザン降りか。
PETER : That's why we are exploring the house.
ピーター:だからうちんなか探検するんじゃないか。
Now, what's here?
さて,ここはなにがあるかな。

SUSAN : What an enormous room!
スーザン:おっきなお部屋。
LUCY : It must be for guests.
ルーシィ:きっとお客さん用よ。
SUSAN : I wonder how many rooms there are.
スーザン:いったい,いくつお部屋があるのかしら。
EDMUND : I'm tired.
エドマンド:もう疲れた。

NARRATOR : Once there were four children whose names were Peter, Susan, Edmund and Lucy.
語り:むかし,ピーター,スーザン,エドマンド,ルーシィという4人のきょうだいがいた。
During the war, they were sent away from London to the house of an old Professor who lived in the heart of the country.
戦争のあいだ,ロンドンから遠いいなかにある教授のお屋敷に子どもたちだけで疎開してきたのだ。



 4人のきょうだいが屋敷にあったタンスをぬけてたどり着いたところは,一年中冬で,しかもクリスマスがこないナルニアという国。偉大な統治者であるライオンのアスランからナルニアを奪おうとする白い魔女によって,永遠に春の来ない状態になっていたのです。4人の子どもたちはアスランに協力して白い魔女をやっつけ,最後にはナルニア国の王となるのでした。

 ファンタジー作品では別世界に行く特別な道が必要です。この物語ではタンスがナルニア国への通り道となっていて,読者を物語世界に一気に引き込んでいきます。またこの作品には,人間と同じように服を着た動物や伝説の生き物,妖精などさまざまな人物が登場し,読者の気持ちをつかんで離しません。

 ヨーロッパの人びとにとって寒くて暗い冬は,とてもつらい季節です。そのようなつらい冬のなかのクリスマスは,人びとの楽しみでもあります。ですから,一年中冬でクリスマスがこないナルニアのどんなに不幸な国で,その国を支配する白い魔女がどんなにひどい存在であるかがわかります。その白い魔女をアスランといっしょにやっつける冒険に読者も参加し,最後には4人きょうだいが王となってホッとすることができます。

 この作品は,C.S.ルイスの全7巻による大作ファンタジー「ナルニア国年代記」の最初の作品です。ルイスは「はじめから全編が決まっていたのではなく,まずはじめに『傘をもったフォーン』『ソリに乗った魔女』『偉大なライオン』のイメージがあった」といっています。そこから物語が始まり壮大な年代記となりました。

 「子どもの本は自分のいわずにいられないことを表現する最良の芸術形式だ」というルイス。この作品はさまざまなエピソードが展開し,ひとつひとつの出来事が関連して完結します。ファンタジー作品で重要なのはハッピーに終わることですが,この物語でもいいことも悪いことも関連してハッピーエンドに繋がっていきます。ハッピーエンディングという幸せを人間は求めますから,多くのファンタジー作品に人気があるのはそのせいでしょう。クリスマスを迎えるこの季節,みなさんも一度聞いてみませんか。