This month's
story今月のお話

2019年9月の紹介

AN OLD CRAB'S TALE

かにむかし

むかしむかし,かにが汐(しお)くみをしようと思うて浜べへ出たところが,
Long long ago a certain crab went down to the sea to fetch some water and when :he arrived on the shore
砂の上に,どこからどうしてきたもんだか,ひとつぶの柿のたねが落ちておった。
he saw a single persimmon seed sitting on top of the sand as if it had come out of the blue.
かには柿が大すきであるから,
Now the crab happened to be mad about persimmons.
「こらァええもんがあった。
“Well, bless my lucky stars.
いっちょ,うちのにわにまいてみよう」
I think I'll just plant it in my garden at home an' see what pops up,”
と思うて,それをひろうてもどった。
he thought, picking up the seed and hauling it home.
そうしてかには,そのたねを,うちのにわのすみにまいておいてから,
So the crab planted the seed in a corner of his home garden,
毎日毎日せっせと水をかけたりこやしをやったりしては,
not missing a single day to shower it with water and manure,
「早う芽をだせ,柿のたね,
“Get yer sprouts a-sproutin', little persimmon seed.
ださんと,はさみで,ほじりだすぞ」
For if you don't, I'll dig ‘en up with my pincers!”
というておったら,柿のたねは,ほじりだされてはかなわんと思うたかして,やがて小さな芽をだしたそうな。
At that, the persimmon seed put out a teeny little sprout, for it wasn't going to be caught dead being dug at with a pair of pincers.

 赤い柿の実がなると,さるが山からやってきて柿をもいで食べてしまっただけでなく,かにに柿をなげつけて殺してしまいました。そのかにから生まれた子がにたちは,さるへのあだうちに向かいます。途中出会った,パンパンぐり,はち,牛のふん,はぜ棒,石うすは,「日本いちのきびだんご」をもらって仲間になります。さるの家に着くとそれぞれが隠れてさるの帰ってくるのを待ち,とうとうさるをやっつけるのでした。

 「さるかに合戦」などと呼ばれる有名な日本の昔話です。子がにの,さるに対する敵討ちですが,リズミカルな繰り返しやオノマトペ,クスっとするような表現がちりばめられ,結末がわかっていても,何度でも聞きたくなる話です。昔話は子どもだけのものではありません。人びとのあいだに長く語り告がれてきた物語です。作者の木下順二氏は昔話の再話について,「(私は)よい米をバリッと炊いているわけで,子ども用にぐちゃぐちゃには炊いていない。それを食べられるようになることが成長するということで,わからなければわかるまで頑張ってもらえばいい」とお話されました。洗練された昔話をよくかみしめて読むと,それはまさに自分の糧となることでしょう。

 日本語を語るのは,名優の宇野重吉氏です。宇野氏の独特な語り口は,日本の昔話の世界に聞き手を引き込みます。氏の語りが収録された貴重な音声作品といえるでしょう。英語はロジャー・パルバース氏が,日本語のリズムに負けない英語表現で翻訳しました。こちらの英語もお楽しみください。

 英語を身につけるのにも,海外の文学ばかりを読むのではなく,日本の作品も読んで,自分の英語で日本の文化を語れるようになるといいでしょう。日本の物語を英語でも紹介できようになるといいですね。