This month's
story今月のお話

2019年1月の紹介

IN THE NIGHT KITCHEN

まよなかのだいどころ

DID YOU EVER HEAR OF MICKEY,
ミッキーのはなし,しってるかい?
HOW HE HEARD A RACKET IN THE NIGHT AND SHOUTED
まよなかに あんまり さわがしいおとが するので どなったら
QUIET DOWN THERE!
うるさいぞ しずかに しろ!
AND FELL THROUGH THE DARK, OUT OF HIS CLOTHES
くらやみにおっこちて,はだかになっちゃって
PAST THE MOON & HIS MAMA & PAPA SLEEPING TIGHT
つきのまども,ママとパパが ねているへやも とおりすぎて
INTO THE LIGHT OF THE NIGHT KITCHEN?
おりた ところは あかるい まよなかの だいどころ
WHERE THE BAKERS WHO BAKE TILL THE DAWN SO WE CAN HAVE CAKE IN THE MORN
そこではまいばん,パンやさんたちが よるもねないで ぼくらのために あさのケーキを やいている。


 パンやさんたちは落ちてきたミッキーを,ミルクとまちがって粉といっしょにまぜ,ミッキー・ケーキをつくってしまいます。「ミルクが ないと,あさのケーキが つくれない!」とさけぶパンやさん。そこでミッキーはパンの飛行機に乗り込んで,ミルクを取りに天の川へ。ミルクのビンに飛び込んでパンやさんたちにミルクを渡すと,朝のケーキができあがり。ミッキーは「コケコッコー!」とさけんでベッドにもどってくるのでした。

 自分たちが寝ているあいだにどうやってパンが作られるのか? 作者のモーリス・センダックが子どもの頃に見たパン屋の広告文句“We Bake While You Sleep”から構想してつくった作品です。だいどころには,センダックが生まれ育ったニューヨークのスカイラインが描かれ,彼の思い出の人や物の名前があちらこちらにちりばめられています。だいどころに落ちていくときや,天の川に向けてのぼっていくときのミッキーの満足そうな顔が印象的です。

 子どもの心の内面をファンタジーという手法を通じて描き続けたセンダック。この作品についてセンダックは「どうすればひと晩じゅう起きていて大人が何をしているかを知り,子どもだというだけで禁じられている楽しみを味わうことができるか」(『センダックの絵本論』岩波書店)がミッキーの問題だったと語っています。暗い夜のあいだに起きる不思議なできごとを,ひとりで冒険し,そしてもとの自分のベッドに帰ってくるミッキー。ミッキーといっしょにみなさんもまよなかのだいどころを冒険してみませんか?

 ちなみにこの主人公のミッキーは,センダックと同い年で大好きだったディズニーのミッキー・マウスをオマージュしています。