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story今月のお話

2018年11月の紹介

Olle's Ski Trip

ウッレと冬の森

 On Olle's sixth birthday, his father gave him a pair of new skis.
 ウッレは,六さいの誕生日に,おとうさんからあたらしいスキーをもらいました。
He had never had a pair of real skis before,
ウッレは,今まで本もののスキーをもったことがありません。
only a small pair which Johan the farmer had made for him out of some old boards.
お百しょうのヨハンさんが,ウッレにふるい木ぎれでこしらえてくれたものがあるだけでした。
So, as you can imagine, he was very anxious to try his new skis.
ですから,あなたもわかるでしょうが,ウッレは,あたらしいスキーですべってみるのが,たいへんたのしみだったのです。
 But that year the winter too such a long time to come.
 それなのに,その年は,なかなか冬がきませんでした。
Of course it snowed a little sometimes, but the snow would soon melt, even before the ground had turned white.
もちろん,ときどき雪は降りましたが,土が白くならないうちに,とけてきえてしまいました。
Olle waited and wondered:“Isn't the winter ever going to come this year?”
ウッレは,雪をまってまって,ついには,「ことしはもう,冬がこないのかなあ」とまで思いました。


 待ちに待った雪が降り始めると,ウッレはスキーをはいて森へと入って行きました。白霜じいさんに導かれ森をすすんで,たどり着いたのは冬王さまの城。そこでウッレはクリスマスに間にあわせるようにとスキーやスケートを作る子どもたちに出会い,休み時間にはいっしょに雪の中で遊びました。楽しい一日を過ごしたウッレは,家にもどると森での出来事を話さずにはいられませんでした。そしてクリスマスになると,冬王さまの約束とおりにスケートが届けられ,ウッレは冬じゅうスケートとスキーを思う存分に楽しみました。やがて春になると今度は雪どけばあさんが雪をはらい,春の王女さまがやってきたのでした。

 北欧の長くて暗い冬のなか,子どもたちの雪のなかでの楽しみ,冬の神秘や喜びを,さまざまな登場人物とともに表しています。白霜じいさん,冬王さま,ラップランドの人々,雪どけばあさん,春の王女さま。子どもたちにとっては自然のなかに存在する特徴のある登場人物に親しみを感じることでしょう。冬はいってしまうけれど,次にやってくる春といった季節の到来をすなおに喜ぶことができます。

 作者のエルサ・ベスコフはスウェーデンを代表する絵本作家です。彼女の作品の中で子どもは生き生きとして,とても自由に描かれています。この『ウッレと冬の森』でもまっ白な雪の風景のなかにウッレの赤い帽子,青いジャケットが映え,子どもらしい主人公ウッレを描いています。物語の場面の温度をも感じさせるイラストが毎ページに続きます。軽快な音楽とともに楽しみたい作品です。