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story今月のお話

2018年8月の紹介

THE THREE BILLY GOATS GRUFF

三びきのやぎのがらがらどん

ONCE on a time there were three billy goats who were to go up to the hillside to meke themselves fat, and the name of all three was “Gruff.”
むかし,三びきの やぎが いました。なまえは,どれも がらがらどん と いいました。あるとき,やまの くさばで ふとろうと,やまへ のぼっていきました。

On the way up was a bridge over a river they had to cross,
のぼる とちゅうの たにがわに はしが あって,そこを わたらなければなりません。
and under the bridge lived a great ugly troll
はしの したには,きみのわるい おおきな トロルが すんでいました。
with eyes as big as saucers and a nose as long as a poker.
ぐりぐりめだまは さらのよう,つきでた はなは ひかきぼうのようでした。


 三びきのやぎが草を食べに山へ登って行こうとします。途中にはトロルがやぎを食べようと待ちかまえています。一ばんめの小さなやぎは「すこしまてば,ぼくより大きなやぎがやってきますよ」とやりすごします。二ばんめ,三ばんめとやってきて,三ばんめのやぎがトロルと戦い,谷川へと突き落とします。

 多くの子どもは一番小さなやぎに自分を投影して物語を楽しむことでしょう。一ばんめ,二ばんめ,三ばんめと進んでいく典型的な昔話の語りですが,物語の展開に子どもはわくわくドキドキしながら,やぎとトロルの戦いの場面を迎えます。そしてトロルがやっつけられることで,子どもは自信をもつようになり,安心して物語を楽しむことができます。おはなしのなかで三びきの関係は語られませんが,子どもは自分自身がだんだん強くなれるのだということも感じ取り,励まされる気がするのではないでしょうか。

 トロルは北欧の山に住む妖精です。フィンランドの作家トーベ・ヤンソンの『ムーミン・シリーズ』のムーミンもトロルで,北欧では親しみのある妖精です。「妖精」というと小さな存在のように想像しがちですが,この絵本のトロルのような大きな怖い妖精も存在します。超自然的な力をもち,不思議で何が起こるかわからないといった期待感やその存在を信じる気持ちを子どもに抱かせる妖精。それらが登場する多くの物語を,人間は語り継いできました。

 作家のマーシャ・ブラウンは物語に合った画法を選んで絵本を制作しました。この北欧の昔話では,夏でも涼しい北欧の自然を水色と黄色を基調に描き,黒と茶色の太い線で迫力のある物語に仕立てています。