This month's
story今月のお話

2018年4月の紹介

The Ugly Duckling

みにくいあひるのこ

This is how the ugly duckling was born.
そのみにくいあひるのこが生まれてきたときのようすはこんなふうでした。
It was a warm sunny summer day.
暑い,お日さまのキラキラする夏のある日。
Mother Duck was talking to herself.
おかあさんあひるがひとり言をつぶやいていました。
She was all alone, you see.
ひとりぼっちでしたからね。
“Why doesn't this egg hatch?
「あぁあ,どうしてこのたまごはかえらないんだろう。
I've been sitting here such a long time.
もうずいぶん長いことここにすわりつづけているんだよ。
It's the last one.
これ一つだけ残ってる。
The others all hatched long ago.
ほかのはみんなとうの昔にかえっちまった。
They should be swimming by now.
ほんとうはもう泳いでいなくちゃならないころなんだけど。
They're getting into mischief while I wait for this one.
あの子たち,あたしがこのたまごにかまけているあいだにもういたずらをはじめてるよ。
The egg is too big.
なにしろこのたまごの大きいこと。
That's why it's taking so long.”
そのせいでこんなにひまがかかるんだねえ」
“Peep, peep.” “Peep, peep.”
「ピヨピヨ」「ピヨピヨ」


 最後に生まれた不格好な灰色のあひるのこは,ほかのあひるのこから意地悪をされ,お母さんさえも「あの子,生まれてこないほうがよかった」と嘆く始末。そこで生まれた庭を逃げ出したあひるのこは,行く先々で危険や恐怖,また理不尽な扱いを経験します。「世界が知りたい」とひとりで旅を続けるあひるのこ。やがて秋,冬を越えて,あひるのこは本来の自分の姿に気づきます。あひるのこは美しい白鳥だったのです。物語の最後は「ほんとうの自分になれたのです」と終わり,まさに子どもの成長物語といえる作品です。

 「童話の王様」と呼ばれるデンマークの作家,アンデルセンの代表的な作品です。残酷とも言える場面さえも美しい詩として表現するアンデルセン。しかしながら彼は貧しい靴屋の子に生まれ,父親を早くに亡くし,学校に通うこともままならずに都会に出て苦労しました。彼の童話が人々のこころにふれるのは,彼の苦しくも楽しかった人生がその作品に表れているからといえるでしょう。アンデルセン自身,「私の一生は一篇の美しい童話だった」と回想しています。

 絵本は司 修氏が色鮮やかに自然の美しさ,厳しさを描いています。音声とともに楽しみたい作品です。