This month's
story今月のお話

2017年11月の紹介

Sukh's White Horse

スーホの白い馬

To the North of China, in Mongolia, extends a broad, grassy plain.
中国の北のほう,モンゴルには,ひろい草原がひろがり,
The people who live there have kept sheep, cattle and horses for many ages.
そこに住む人たちは,むかしから,ひつじや,牛や,馬などをかっていました。
Here in Mongolia, they have a musical instrument called the‘morin khuur’or the horsehead rebec.
このモンゴルに,馬頭琴という,がっきがあります。
It is so called because the upper part of it is shaped like a horse's head.
がっきのいちばん上が,馬の頭のかたちをしているので,ばとうきんというのです。
Now how did this musical instrument come to be invented?
けれど,どうしてこういう,がっきができたのでしょう?
There is a story about it that goes like this.
それには,こんな話があるのです。


 馬頭琴という楽器の由来が,広大な草原の風景とともに語られるモンゴルの物語です。大切に慈しんで育てた白い馬を,力づくで殿様に取り上げられてしまう主人公スーホ。殿様のもとから逃げ出した馬は矢に射られ,力つき果てながらもスーホの元に帰ってきます。スーホと白い馬の友情からは,モンゴルの生活のなかで人と馬がどれほど密接な関係にあるのかを感じることができるでしょう。この物語は長いあいだ小学校の「国語」の教科書にも掲載されてきました。

 この絵本の魅力のひとつは,モンゴルの壮大な自然を描いたイラストです。画家の赤羽末吉氏は,広大な草原を描くのに横型横開きのかたちにこだわったといいます。たしかにこの絵本は縦長の絵本では描けなかっでしょう。この絵本にはページをめくるたびに,場面ごとの色彩の違いや構図や場面転換の工夫もあり,モンゴルの大自然を感じながら物語を楽しむことができます。

 赤羽氏は,若い頃に中国の北東部に暮らしたことがあり,そのときに多くの風景をスケッチしました。またその頃にモンゴルの取材をした際の資料がこの絵本の制作に役立っています。果てしなく広がる草原やゲル(モンゴルの放牧民が暮らす移動式住居)での放牧生活,土壁の町並みや民族衣装といったモンゴルの文化が描かれています。50歳をすぎて作家デビューした赤羽氏は,この『スーホと白い馬』で多くの賞を受賞しました。